BLACK MOON, Model Yusei Yamamoto, Shot by Yokna Patofa

Saturday, 22 March 2008

ヴェナリ、暴力、エレガンス

にしすがも創造舎にて、TIF08、three spellsを観て来た。『毛皮のヴィーナス』、『ヴェナリ』、『アレコ』の三作で、『ヴェナリ』のAlexandra Meinの衣装がめちゃくちゃカッコよかった。
 音楽はクリスチャン・フェネス。音楽すごいよかった。
 どれも、最初の方はしろうと目にも物凄く衝撃的ですごかった。 特にヴェナリはイメージが全体的にすごく好きだった。『毛皮のヴィーナス』の衣装はアンダーカバーが担当している。笑うとこじゃない所で笑えたりもした。
 内容は、毛皮のヴィーナスは、なんだろ・・ すごい単純なだけに説明が難しい。スポイルすることになるかもしれないが、起こった事を言うと、まず、毛皮の塊が舞台上に現れる。背景の白いスクリーンには異形の影が映る。それから手のような、海洋動物の触手みたいな、猫の手の遺伝子的な間違いのような、長い角みたいなものが伸びて、その中から、思いもよらない感じで女性が生まれる。女性と毛皮の対決が行われる。この時毛皮をめちゃくちゃ振り回す。ここが多分笑ってはだめなんだけど、物凄いツボで笑いそうだった。途中よく覚えていないけど最終的に全身(顔まで)黒い薄い衣装に包まれた女性が二本足で立ち上がり、セレブっぽい感じの小さな(ブランドっぽいイメージ)バックをエレガントに抱え、私にとっては郷愁を思わせるどこかの国の歌を歌い、エレガントに立ち去る。
 ・・・私は最後のエレガンスが心に残って、一番シュールでいいと思ったんだけど、観終わった後しゃべったら、「退出する時泣いてた」と私の記憶と食い違うので、全然違うもの観ていたのかな、とも思う・・

『ヴェナリ』はイメージが本当に素晴しかった。角を今後どう考えても意識せざるを得ない。角コンシャスにさせられた。
 角が置かれていて、そこに角の欠如を感じさせる肉体が登場する、角と、角のない形がいい。
 そして角を自分のものとして生物は最後に立ち上がり吠える その立っている影と吠えるのがいい
 
 ・・・これは観た後話した所、一番素晴しい瞬間と言う事で意見が一致した。全編を通して、「立っている姿ってキレイだなと思った」というのは私も思った。
 
 この後エラスティックな棒を持った男が現れ、弓矢を構える形、猟銃で狙う形、剣を振るう形などをした後、置いてある角の上に片足をのせ、優雅にポーズをとる。

『アレコ』は和服を着た女性の長い髪の毛を足で自在に操りながらのすごい踊りの後、男がやって来て、女性に日本語で「すみません」と話しかける。女性は髪で男性と格闘(少林寺的な格闘?)を繰り広げる。途中よく覚えていないのだが、そうしてるうちに男は女性の髪をつかみ、調和し二人で歌を歌い始める。女性は自分の髪を切り、女性は死ぬ 男性は女性の切られた髪と、着ていた着物を持って歌いながら立ち去ろうとする途中で、女性が動かなくなっているのに気づき、今度は女性の体を噛み、起き上がらせようとするすごい一連の踊りが始まって、最後に男性のlament  

 昨日からずっと物語のテーマについて深読みしていて、三作品を通して観ていて、西洋の文明と西洋じゃない文化との対決のこと、人間の文化と搾取される動物(毛皮や角とか)が大きな軸としてあって、西洋的な反省の仕方だな、ということを漠然と考えていた そういう風に考えると、アレコで日本語の台詞があって皆ちょっと笑っていて個人的に寒さを感じた部分が、「ある文化(例えば日本文化)と西洋の文化との出会い、ハーモニー、美しい部分の搾取、搾取された文明の死」、みたいな事だというなら納得出来るなと思った。
 だけどそれにしては、観終わった後、「皮カッコいいな、角カッコいいな、毛皮欲しいな」と言う気持ちを喚起させる(私がそう思っただけかもしれないけど暴力は美しかった)のってどうかなと思ったし(そういうの本当に多くのヴィジュアルアーティストの人に感じるけど)、なんか西洋っぽいなとか、すごい上手かったんだけど、プロならもうちょっと上手くてもいいかなと(ここら辺はもう少し色々見なきゃわからないけど)思った。
 でもさっき解説を観ていたら、

『アレコ』
シャガールのバレエ背景画「アレコ」(1942年制作・青森県立美術館所蔵)の物語から着想を得て作られたデュオ作品。相手を愛するあまり殺してしまうという狂気的愛の形を、極限の身体表現から鮮烈に描き出す。驚異的な身体とグルジアの伝統歌唱によって、何もないシンプルな空間を極限まで満たし、見るものの心を強く共振させる傑作。(初演:2006年 青森県立美術館)

『新作・世界初演』
TIF'08の委嘱作品となる本作品は、D.ジャレ振付・出演によるソロ作品。女神アルテミスの入浴中の裸体を誤って目撃してしまったために鹿に変えられて自分の猟犬に食い殺されてしまったギリシア神話の登場人物、アクタイオンを創作の出発点とし、本作ではベルギーの造形作家アレクサンドラ・メインを舞台美術に起用、コラボレーションを行う。

『毛皮のヴィーナス』
2007年欧州文化首都リュクサンブールでのファッション企画展「Dysfasional」による委嘱ソロ作品。衣装は高橋盾/アンダーカバーのコレクションより。D.ジャレ振付、A.ジルベール出演。

てあって、この解説と合わせてはまだよく考えていないけど、神話性や狂気や愛はもちろん深く前提としてあるとは感じていただろうけど、こういうものばかりは、全く自分としては、いい意味で多くは感じなかった。特にヴェナリについては美しく、勝利と感じた部分が悲劇的な部分だったんだなとか。
作品はすごくシンプルで、こういうテーマを出発点とするにしても着地点は現代的で、かえって好感を持った。
 だからここもやはりエレガントに裏切ってるっていうか、誠実性みたいなものについては考えなくてもいい作品なのかなというか、神話、愛、というテーマなのに、印象として一貫してそういう未開のものの喪失みたいなものを呼び起こされたのが、多重的で(現代性とも関わるけど)面白かった。
 暴力性うんぬんについても、別に責めるつもりはなく、実はすごく面白かった。
 三作品を通して、その形の変化、展開の飛躍に現れるエレガンスと暴力が、一番印象的であり、笑えて、面白かった。
  

2 comments:

Anonymous said...

女性のダンサーさんがすごかったですね。
演技を外から観ている、というより、その中に吸い込まれてしまう気がしましたよ。

Yokna Patofa said...

こんにちは!ネグリさん、来日延期なんですね。。かなり情報に遅れてしまいました。

 女性のダンサーさん、すごかったです。毛皮のあの動きの中から細い手足が出て来た時、びっくりしました。二人とも、声っていうか発声もいいですよね。
 
 舞台が終わった後ずっと残ってたら、パーティみたいのが始まって、女性のダンサーさん、近くで見ても可愛かったです。服とかも
 
来週私も芸大行く他に、ピナ・バウシュも観に行こうと思ってます。