BLACK MOON, Model Yusei Yamamoto, Shot by Yokna Patofa
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Monday, 5 August 2013

キャノン写真新世紀2013 佳作(佐内正史選)受賞しました。

















キャノン写真新世紀という新人賞で、今年、佳作(佐内正史選)を頂きました。(YOKNA PATOFAという名前です。)

モデルになってくれた佐々木君、ティアンジャさん、これまで見て来てくださった方々、本当にありがとうございました。
「アセンション・リバー」というタイトルで、一つの未解決事件を元に構成しています。

10月26日から11月17日まで、恵比寿の東京都写真美術館で展覧会が開催されます。私も参加しますので、是非見に来て頂けたら嬉しいです。

またご報告致します。
http://web.canon.jp/scsa/newcosmos/news/2013_result_report/index.html
--------------
I(as yokna patofa) won the Honorable Mention award of Canon new cosmos of Photography 2013(selected by Masafumi Sanai).

Hiro,Tianjia,Thank you so much for making the world with me.and everyone who have been friend with me,thank you so much too.

The title is "Ascension River". I made this with studying one real serial murder case.

Our works will be exhibited at the New Cosmos of Photography Tokyo Exhibition 2013 at the Tokyo Metropolitan Museum of Photography in late October.

I will inform more later!

http://www.canon.com/scsa/newcosmos/news/2013_result_report/index.html



Tuesday, 16 April 2013

絶頂で。(avec ma chère)






救いようも無いほど、という言葉が私は好き。
しかし夏が三度過ぎて、四度目が来たならば。
もう誰も見ないだろうから、別に書いてもしょうがない。
もう私の心の中でさえ、カラクリ一つ機能しない様な。
難しいことにしか、積極的になれなかったのだろう。
こうして筆を取った後破ったなんて、いつまでも謎はしかめつらをさせるままで
忘れたいものなのか、忘れたくないものなのかもわからないものだ。
撮れない遠さ。世界がある。
今月の天秤座:一途な愛

正体不明の

















 8月






cは知的で、繊細で、だけど感情的で些細な事を気にして怒り、かなり夢見がちで、気分が乗ると献身的で、その割には自己中心的で・・・、何よりも大勢の人間に自分の境遇について語り、その中でちやほやされ同情されるのを求めていた。彼女の周りには小さな社交界が出来、彼女の頼みとあれば何でもやりそうな人間たちが集っていた。はじめもっとシリアスで、強く生きようとしながらも感受性豊かなゆえに孤独な人物を思い描いていた私は、その人となりを知って行くうちに、度々苦笑や失望を感じながらも、それでも何かは変わらなかった。いつも、感情というオモチャを自分の中に見つけた途端、分解し過ぎて結局直せなくなる私には、それは滅多に無い、不思議で貴重な体験だった。
 cは私の3つ下で、毛沢東の出身地で石炭か何かの採掘工場の近くのコンクリート壁の部屋に猫二匹(二匹ともミミという名前)と一緒に(恐らく親のお金で)住みながら、抽象的で見た事も無い様な絵を描いていた。その絵は誰の目から見ても才気走っていて、私の周りにいる数多の芸術家希望者の中でも一番凄かった。速度・・・、私もその言葉を使っていいだろうか、それはとても速いように思えた。cと私はfacebookを通して知り合った。ある日Xと名乗る女の子からのフレンド申請があり、リンク先を見てみると、使える言語にはフランス語、ドイツ語、英語、イタリア語・・・。プロフィール写真は長い黒髪の裸の女の子のぼやけた写真だった。好きな映画はベルトリッチのドリーマーズとアニエスの5時から7時までのクレオ。好きな音楽はナインインチネイルズとドビュッシー。・・・この現実離れしたプロフィールにあって、だけど何よりも目を惹いたのが、彼女が蠍座だということだった。その頃も今でも、私にとって、星座というのは重要事項であり、それと等しく重要なのはシンクロニシティであり、更に当時、「蠍座の女の子を撮りたい」と毎日願っていたのである。
 その夜、facebookにログインして彼女のページを見ていると、いきなりXから「bonjour」とチャットの誘いがあり、未だに相手が何者なのか全くわかっていなかった私は、二十分ほど逡巡してから「bonjour」と返した。”X”は、フランス語で3,4行なにかを書いて来た。ちんぷんかんぷんの私は、それまでのページの情報から、相手がきっと中国系フランス人か、フランスに留学している子なのだろうと思い、翻訳機やら辞書やらで必死で調べながら返していたが、間もなくわけがわからない会話になり、遂にはXの方から「英語の方がいい?」と気を遣われるに至った。
「英語もそれほど上手くはないけど、英語の方がいいです。」と返すと、
「あなたは日本人?」と来たので、
少し落ち着いて「そうです。あなたはフランスにいるの?」と改めて聞いてみると、
「あなたは私がフランス人だと思うの?」
と、自分からフランス語を使って来るくせに、ますます意味深な返事をしてくるのだった。
 何と言っていいかわからず、フランス人だと思った理由を書いては消し、書いては消ししていると、彼女の方から、「私は中国人。」とフランス語で、・・・彼女はいつも気取っているので「私は中国人よ。」か・・・、言って来た。それからまた、フランス人と思われたのが嬉しかったのだろうか、
「あなたは私がフランス人だと思ったの?どうして?」
Xは自分の絵がアップロードされているサイトを送ってくれ、そこにはcという彼女の名前が書かれていた。

 cはそれから毎日話しかけて来た。私は大体真夜中から朝にかけて、二時とか三時までそれに付き合った。cが言うのはほとんど愚痴で、基本は自分の才能を周りの誰も認めてくれない、中国のアート界はとても閉鎖的だ、自分の周りはスラムで、今日はママと歩いてるときに道でいきなり殴り合いの喧嘩になって、中国ではカンフーが出来ないと生きていけないのだ、自分は汚いものは見たくないからずっと家に閉じこもっている。だから移動はタクシーで、その上自分は孤児のように育った、更に学校は14から行っていなくて、全ての語学は独学で、会う男は低所得な奴ばっかりで、自分はとても独りぼっちで、これからどうしたらいいかわからない、あなたは私がアートを続けるべきだと思うか?・・・といったものの繰り返しだった。それはどこからどこまで本当なのか、私にはわからなかった。だけどずっと喋っていると、時たま中国の事情や、生活に密着した社会批判が、思いがけない素直な言葉の中に出て来た。中国の感覚。それは果てしなかった。その中の一人の女の子と会話しているというのが、とても面白かった、中国ではfacebookの使用は禁止されている。その他にもほとんどのサイトにアクセス出来なくて、彼女はvpnを通してそれらに辿り着くらしかった。件の石炭工場の騒音は早朝始まるから、それで起きてしまい、昼間はずっと浅く寝ていて、夕方頃ゾンビのように起き出す。それからはインターネット。
「ソウルメイトが欲しい?」
「考えたこともなかったけど、欲しい。」
耳栓が壊れて来た。Waxという会社の耳栓が一番いいらしい。私は耳栓と手紙をcに送った。手紙の封筒は薄いブルーにし、黄色い便箋に「貝台」とだけ書き、赤いキャンドルのかけらをスプーンの上に乗せて炙り、封筒に流すと、金属製のスタンプ「y」を押した。人生で初めてやったので、うまく出来ず固い赤い破片が封筒全体に飛び散った。「貝台」という文字が中国でどんな意味なのか良くわからない。cが以前、夢の中で私たちは同級生で、クラスで手紙を彼女に渡し、開くとそんな内容だったと言っていた。
cのことを知り始めた時、私はインターネットで彼女のことを検索した。出て来た彼女の二、三年前のブログには、四方八方に傷が引かれたばかりで血が溢れ出ている手首の写真があった。私はしばらくそれに見とれ・・・・・・・・・。別のページには、彼女が全裸で、鉄鎖につながれた痩せた長い両足を開き、大きな百合を一本抱えている写真、同じく裸で、どこかの居間で四つん這いになっている写真・・・。「ある晴れた日曜日に、自慰行為をする、偉大なるポルノメイカー」シリーズ・・、それから、どこからか持って来た、死後の変わり果てたマリリン・モンローの写真、あからさまなセックスのイラスト画像・・・私は思わず何百枚かはあるだろうと思われるその写真群を全て見てしまった。だけど一番面白いのは、そのスライドショーのコメント欄にどこかから湧いた誰かが書いた、「見ろよ!このビッチはすげー熱いぜ!」に対する、「短小に違いないわね、ドブの中のクソ野郎。」という返事なのだった。あれだけ自分で出しておいてそのコメントはないだろうと思わず笑ってしまった。このページを見た事自体について、本人にも言った。「すごく面白いと思った。セクシャルなことについてはわからないけど・・・、とにかく、すごく面白いと思った。」
一番似ているのはトニーだ、と私は思う。トニーもまた、インターネットで知り合った。一度しかメール交換をしたことはなく、一月の彼の誕生日におめでとうメールをした時に返って来なかったので、好かれていないのかと思い少し傷付き、それ以後は何も積極的には交流しようとしなかった。その年の夏亡くなったということを、彼の死後ほぼ一年後に知った。
 誕生日のメールが無視された後、トニーが一時期、何の変哲もない部屋で撮った、こちらを見ている、トニーの、連続の写真を、何十枚もアップしていたことまでは、リアルタイムで知っている。歯を剥き出したり、笑ったり、真面目な顔をしたり・・・それらの顔は今思えばむくんでいるけどその時はどんな意味かなんて考えもしなかった。私はそれを彼流のナルシシズムだと受け取り、面白いと思ったが、あまり押し付けがましくならないように、一番いいと思う写真だけ、favoriteにした。彼の死のニュースを聞いた後でネットを検索すると雪崩のように彼の生の痕跡が入り込んで来た。パパ,ママ,アイラブユー。「death」。それから、トニーが鏡の前でお尻を出して、喘いでいる写真、とかも。トニーから友達への手紙。「俺は君を生き別れた兄弟のように思ってるよ。すごく愛してる。」
だけど自分は聖人だから彼を気に入ったわけではない。彼のワイルドな面が面白かった。「最近ある男と知り合って、彼によってフィストファックに開眼させられた、俺の中に入れるのに、一時間もかかっていた。最後は水が沢山出て、イった。最高のエクスタシーだった。すっごく素晴しかった。来週また会う約束をした。早くまた彼に会いたい。実験してくのが楽しみだよ。俺は女と子供以外なら、なんにだってオープンだし。こないだは森で男二人とセックスをした。それから部屋でセックス持久走。セックスは俺の人生にとってとても重要なものだ。」

「俺は豚。自分の欲しい物がわかってる。」

 トニーに対する親愛なる感情。トニーは混乱していると言っていた。焦点も対象も存在しないような様子で、「奇妙だ」「俺は怖いのか?」。多くの人の中では一見バラバラにされているような極端な要素たちが0度に融合した危ない天体のような彼らの純粋性に、そのリスクに、癒されると私は感じたのだろう。彼の才能を賞賛した。会えないとは想像出来ず、遠目から見ているだけだったが、死後はもっと自分勝手に、名前を呼び、親しくなった。一時期、トニーの霊に、私の体でいいなら入ってもらいたいと思っていた。「君とならうまくやっていける。」「何か面白いことが起こりそうだ。」「起こるかもしれなかったものを見てみたい。」彼は音楽を様々な名義で大量に作っていた。それを聞かせれば、言葉よりもずっと明確に彼の事がわかるのだが。「ああ」と皆思うだろう。でもそれは最高の感想でも間違っているのだが。彼は邪悪で、変で、才能があり、ブラックなユーモアに溢れていて・・・ところが cに彼のことを紹介すると、「彼のどこが刺激的なの?」と、正直言って疑問といった様子で、私はそのメールを受け取るとすぐ、たどたどしくキーボードを打ち始めた。「彼は自分でも何をしているかわからなかった。形にしたいとかではなく、彼はただ生きていた。彼は未完成だった・・・」そこでいれておいたコーヒーを一口飲んだ。書いていくうちに雨が降り始め、メカは壊れて水性インクが溶け始めていく感じがした。私は英語が上手く使えないのを有り難いと感じた。
だけど、何が悪い?私にはこのあり方しかなくわずかな時間差で、寝顔を見る側についた。ネットで彼は幽霊についてまた調べた、それからまた、気にしないことにした。たぶん泣くことが助けになる。
「私にも詩人でピュアな、好きな男の子がいたけど、会ってみたら最低な奴<膣洗浄機>だったわ。私の経験では、会わないでプラトニックな思い出のままの方がいいでしょうね。」
「私はアントニオのことを愛してる。同じように、あなたのことも、あなたの才能も、愛してる。」
cはこの言葉の後しばらく何も答えず、その沈黙は、私をボーッとさせた。
 トニーとは少ないやりとりしかなかったけれど、cとはこうして晴れて友達になった。モニター越しに見る彼女はコンクリートの無機質な白い壁を背景に、白昼夢のように儚くてだるそうで、お姫様みたいに可愛い女の子に見えた。cは、自分の生い立ちについても話してくれた。
「パパは私が女の子だったから、私のこともママのことも嫌ってる。中国では男の子の方がずっと価値があるの。パパはアーティストで、小さい頃から私に絵を無理矢理描かせて、上手く描けないと殴った。14歳で学校へ行くのをやめてからは、部屋に文字通り監禁した。私にはインターネットしかなかった・・」
「・・なぜお父さんはあなたを監禁してたの?」
彼女は表情を変えず、穏やかに答えた。
「he is psycho.(いかれてるの。)」

 しばらくのチャットののち、私はこの変人で天才肌のcが、どうしようもなく好きになって行った。美しいものを見ると、cに見せたいなと思った。二人が会う時、ショパンが流れているべきだと思い、facebookのwallに私はそれをpostした。ディヌ・リパッティの。怒らないで欲しい。私は本気だった。ヘッドホンで聞きながら想像すると、涙が流れてきそうだった。中国は遠い。cが前に話してくれた映画の構想を思い出し、それを撮ろうと言った。お風呂で、たくさんの金魚の中で、もちろん、彼女は裸で。
 
 そう、最も引きつけられるのは傷だった。左腕の内側に、手首から肘にかけて、長く、白い肌にピンクに膨らみ盛り上がった傷痕。一番考えられるのは「同情から」だったけれど、彼女の傷を感じる時はいつも、それよりもずっと、激しい気持ちが渦巻いた。まるで、その傷を作ったのが昔の自分であるかのような。


 ある日いつものようにメールボックスをチェックするついでにトップニュースを見ると、そこにはNという街で、猫が連続で残虐に殺されているという記事が出ていた。競輪、パチンコ、反フーコー的精神病院が揃った昔住んでいた街では、猫の死体をよく見た。あるものは車に轢かれ、あるものは明らかに何者かから暴行を加えられ・・猫は確かに一番手っ取り早い暴力の対象みたいだった。
 その後メールボックスを見ると、cからのメールがあった。<チベットへ一緒に行きたくない?>。私はこの唐突さに、本当に面白い人だと思いながら、
「勿論行きたいよ。チベット好きなの?」と返した。
<とっても。>私は少し意外に感じ、
「いつ、何故行くの?」
<11月。前から行きたかったし、来月私の誕生日だから。>
「うーん。11月か・・・。早い、」と返信した。
<なぜ早いの?>
言い終わるかどうかのうちにすぐにチャットに切り替わり、<中国までのチケットは買える?>と今度はケータイにメッセージが入った。
<日本語を子供に教えられる?・・・中国まで来れば、そういうような仕事があるから、こっちでお金を稼いでチベットまで行けばいいわ。私が泊めてあげる。>
「わー・・。ありがとう。すごく嬉しい。」
それを読みながら、ふと私は、今の今まで忘れていた、今朝がた浅い眠りの中で見た夢を思い出した。
 夢の中で、私は少年を見てる。その少年は、逆三角形の底の絶頂に、たった一人きりでいる。

 それを言うと、cはいつもの調子で刺激を受けたのか、すらすらと自分の続きの想像世界を送ってきた。
<もしも逆三角形の頂点に、男の子がいるなら、それはつまり反映で、三角形の山から海を覗いているのが男の子なら、そこには反映として女の子がいるに違いないわ。逆もまた然り。私の想像力はそう言ってる・・・・・・・・。>
 彼女の咄嗟に出て来るヘテロセクシュアルな意識に少し傷付きながらも、私は、それは確かに一番バランスのとれた光景だ、と思った。とても感動的だ。だけどもし私が感動するとすれば、二人の結びつきが恋とか愛とかじゃない場合。もっと絶望的なまでに運命的な場合だ。


「インターネットで知り合った中国人の女の子がね、耳栓が欲しいっていうの。耳栓なんて、中国の方が安そうなのにね。毎朝近くの石炭工場かなんかの騒音で起こされるんだって。だから耳栓欲しいらしい。愛の証に欲しいのかな?絵を描いてて、すごく繊細な子なの。」
湖に浮いた油の虹色:「その子にはこっちのことは言わないの?グロい肥料工場のせいで臭くて大変だって。人も猫も、空気も水も、生まれた時から地球滅亡までバグってるって。」
「言わないよ。有りもしない話ばっかしてる。一緒に世界中を旅をしながら絵を描いて売れたらいいねとか、」
私は振り返り、男の子の方を向いた。男の子は丸坊主で、痩せていて、制服を着て、心もとなさそうに立っている。
 どちらが純粋な愛なのかと言われたら。cに対するのと、彼に対するのと。私はきっと、彼に対する愛だと答えるだろう。私とcの生まれた瞬間の、海王星と金星の配置を思い出す。「あなたはいつか、本気の愛の中にいるのは自分一人だと気付くでしょう。」だけど、実際は・・・。少なくとも、私の意識では、それはお互い様だった。cの夢見がちな言葉は私の現実には合わない。cは私が救うべき人ではない。その証拠に今でもcは色んな男との出会いを繰り返してる。初めて、このドットの不安定な集合という形で、目の前に現れた時、似つかわしくもない可憐さで彼女は言った。「"リエゾン"みたいなものよ。不潔な。」そういったありえなさそうな全てが好きだった。時には生々しい矛盾や感情に揺さぶられもしたが。私は自分を選んだ。中国にもチベットにも行ってない。遠くへ散歩した日に卒業式なのか入学式なのかわからないが華々しい人たちを通り抜け、落ちた赤い大輪の花があったから、三つ位拾って帰って撮った。私にはそれがそうだった。「それ」が「そう」だった。私が救うべきなのは、今目の前にいる、この男の子なのだと思った。今は言葉の全てが通じないのが悲しく思う。私があの日花を拾った道を底辺にした逆三角形の絶頂。だけどこの子がこの世界の一体どこにいるのか、私には皆目見当もつかないのだが。それは引き寄せられるかもしれないとも思っていた。行く先々で、少し人と仲良くなると、彼の話をした・・・・・。中学生の男の子の写真を撮りたいんだよね。内向的で、ピュアそうな。














海の中。彼女は目をつぶっている。口が少し開いている。そこから小さな泡が出ている。髪の毛は青く揺れている。顔は浮力で左側に傾いている。私はそれを直した。太陽が昇ると、海面から差し込むまだらな光が体じゅうをゆっくり動いた。
ずっと見つめていた。
 起きて欲しいのか?このままでいたいのか?私にはわからない。











8
 何分走っただろうか、光が飛び散る後部座席で、彼女は目覚めた。私は彼について尋ねた。彼はどこにいる?彼は第三十四工場地帯を流れる川で体を洗っている。と彼女は言った。
「誰かが死んだから、しゅんが埋めたの。だから身体に付いた血を洗ってる」
 彼は三つの電灯と月明かりで照らされた工場地帯を流れる川にいて、その川は流れが止まったように静かだ。彼は目を瞑りながら脈打つ、聖なる生き物みたいな青と黒と光を見つめている。彼の体から濃い赤黒い煙がそこへ、広がって、いつの間にか消えて行く。彼は自分の顔を間近に見る。波の模様に柔らかく溶ろける、濡れた、幼い顔。彼はむこう岸に行ってみようかとも考える。右を向くと、乾いた色の石の中に、掘り返した土の山と、魚の骨みたいなアンテナがあった。もう一度来た時にわかるように、彼は廃墟の屋上から持って来たアンテナを深く差し込んで立てた。一歩進む度パリパリ言う、感染しそうな屋上から冷たい固い黒い塊を木が生い茂る元病院の中庭に落とすと、それは瞬間バッと体を開いて、その後は張りつめた一つの傘として、ゆっくりと穏やかに、落ちていった・・・。しゅんはそれを見つめながら、死んだ後、生物はどうなるのか、何パターンか考えた。だけどどのパターンでも、死者に自分の声や思いや行動が届くということは、信じられそうになかった。それでもぼくが"彼"を埋めたのは、としゅんは川の中に潜って、窒息して崩壊しようとしながら出来なくて、水面を破裂させ、苦しそうな顔を拭って考える。何故なのだろうか?
「しゅんを迎えに行こう。」私は言った。
Tは下を向いて、自分の開かれた機械式の体を微かに震える手で抑えながら、「34工場地帯は、迷路みたいになってる。法則に気付いた誰かが、最終電波塔に辿り着けないように。」
「しゅんはどの辺にいるの?どうやって入ったの?」
私は不思議な焦りを感じ、思わず息咳き込んで聞いた。
「私たちが小さい時、パパが」
Tは私の問いに答えるでもなく、途切れ途切れに話し始めた。Tの口から「パパ」という言葉を聞くと、私は怒りと嫉妬が混ざった気持ちで、自分の胸が、突き刺された蛇やミミズみたいに、痛むのがわかった。そんな場合ではないのに。「・・・」Tは何かを言って微かに笑い、私は顔を再び上げた。
「しばらくあの川で遊んでた。その冬、最終電波塔までが完成して、あの辺は迷路になった。」
Tはそれから少し休み、呼吸を整えた。
「しゅんは良くあの辺に行っていたから。きっとすごく奥の方にいる。」
 車は激しい雨から血で出来たような霧雨に変わった世界で、方向を見失って止まった。
「誰かほかにその辺に詳しい人はいない?」
その時、2001年度のゴミ捨て場の山の中に捨てられていた男が目覚めた。そして、今。赤い水滴で甘そうに光っているタクシーの窓をどんどんと叩いた。
 真夜中にぽつんと止まる、タクシーのドアがノックに答えて勢い良く開き、身体中からコードを突き出した、巨体の粘土男が窮屈そうにしながら前の座席に乗り込んで来た。よくみるとコードの他にも所々から、植物の根や、種類も太さも年代も違う骨が、乱雑に飛び出ていた。
 

 






















 







Thursday, 21 February 2013

closer 0 tony: stalemate(追記)





(from the facebook picture)





1
去年翻訳したいと、このブログに書いたデニス・クーパーのGuide・・実は随分前に読み終わり、
とてもいい話だなと思い、自分なりに感動もしたけれど、翻訳は到底出来ないと思っていた。
少なくとも、同シリーズのTryとPeriodをまだ読み終わっていないし、出来れば他の作品も読んでからにしたいと思った。
心の中でそう決めていたのだけど、ブログでやるとだけ書いたまま公にはしていなかったので、もしかしたら期待している人もいるのかもしれない、と思い、ちゃんと書かなくては、と思いました。
少なくともとりあえず時間はかかりそうです。

Guideがどういう本だったか・・・・・。
前にも書いたけれど、SMOTHERED IN HUGSというエッセイ集の中にも入っている、HIVポジティブの(ほぼホームレスでハスラーの)男の子とその周辺の友達についてのドキュメントに一章割かれていて、これはとてもシビアなものになっている。その他も、アーティスティックだけどポルノコミック描いたりポルノビデオを作ったり、ドラッグばかりやってる変わった仲間たちとの群衆劇のような形で物語が進んで行く。当然その中には死への欲動という要素も、その要素を一身に引き受ける、デニス好みのタイプの男の子も何人か出て来る(長髪で、美形で、痩せていて、若くて、夢見がちで・・これらの理想を結集させたモデルが、デニスの実際の初恋の相手、ジョージということになる)。全編通して作家であるデニス自身の語りによって、恋の始まりとそれが冷めてカチカチになる様子が恥ずかしいほど描かれ、愛されたいというピュアな願い、欲望するということの際限の無さがスピリチュアルかつ論理的に分析され、だけど進んで行く現実の解毒剤にはならずに胸を締め付け、白昼夢の中だけで再会すること、音楽、各種ドラッグ、ポルノ(幻想)、ハードコアなセックスが、日常の中に代わる代わる登場していく。
個人的に、この小説で一番なにを感じたかって言ったら願い・・・。デニスのジョージに会いたい、つながりたいという願いを感じた。
このGuideの後、デニスはジョージをモデルにしたシリーズの最後の小説、Periodを書くことになる。
何故なら、それまで、生きていて、自分の小説をきっと何処かで読んでいてくれていると思っていたジョージが実はそのシリーズが始まる前に、自殺していたことを知ったからだ。Periodの最後の方はこんな感じ


7:11: He's screwing me.Hard to write.
7:14: Tried to look back at him.
7:18:Gonna try again.
7:19:Not sure what I saw.
7:22:Had to bite my hand for a minute.
7:26:Excuse me.
7:26:You said something.
7:26:His lips said,No,I didn't.
7:32: Biting my hand again.
7: 38: He rolled me over.
7:39:Worse like this.
7:41:He put his face before mine.
7:42: Looking at me.
7:48:Shut my eyes for a while.
8:48:He's still looking.
8:52:His lips said,I can't believe it.
8:57:Bit my hand.
9:03:He looks confused.
9:05:Worse pain.
9:07:Hard to write.
9:08:Can't think.
9:08:His lips said,I don't believe it.
9:10:He shut his eyes.
9:13:Thinking.
9:14:Might write,I love you.
9:16:Waiting 'til he opens his eyes.
9:18: Waiting.
9:20:He hit me.
9:21:Not sure if I feel it now.
9:22:He hit me again.
9:23: More.
9:24: Gonna shut my eyes

(Dennis Cooper"Period" P.104~105)



Guideはその前の作品で、Closer,Frisk,Tryという順番で、四作目なので、本当ならTryを先に読むべきだったんだろうけど、こっちを先に読み始めてしまった。CloserとFriskは訳されてもいて、どっちも面白い(何日か前の日記にも書いたけど、CloserではSwansのGreedが出て来る。とても似合う。あの曲が似合う小説なんてなかなかないと思う。)。
ただ、ここまでジョージとデニスが強烈につながりたいという思いがダイレクトに来たのはこの小説が初めて。何しろデニス自身が主人公というのもあるんだろうけど。
レズビアンのカップルの扱いが少しひどかったけれど(読んでみたらわかる..)、この人の繊細さっていうか、優しさが全編溢れていた。
これも前にも書いたけれど、2010年くらいだったか、もっと前だったかもしれない、
アントニオ君ていう男の子をネットで知った。ほとんど何の情報もないまま、すごく激しくて個性的と言えば簡単だけど、残酷で得体の知れないヴィジョンに満ちていて、目的不明(少なくとも商業や既存のアートには収まらない)のビデオをyoutubeにアップしていた。神聖ささえ感じるような。・・・多分、ウィッチハウスを流行らせたDisaroレーベルのRobertのfacebookの友達関係だったんだろうけど。彼の作品に感じるものがとてもあり、誰なのか知りたくて、メールを送った。



yoknapatofa:こんにちは
フェイスブックから来ました。
あなたのヴィジョンがものすごく好きです。
あなたに近づきたい。

Re: hi
近づくって?

yoknapatofa:
つまり、あなたの作品がもっとみたいのと、あなたのことがもっと知りたい。


その後多分少ししてから、こんなメールが来た。


Re: Re: Re: hi
ぼくはすごく悲しい気持ちなんだ、ぼくの作品が、ぼくが作ったインターネットのアイデンティティの中でしか自己を現せなくて、形あるものとしてネットの外に存在していないも同然だから。ぼくはただの男、アラバマ在住、21才、名前はアントニオ、録って書いて録って、このページにある全部のビデオと音楽を作っている。これが基本的にぼくが毎日やってることの全て、ぼくは学校へ行っている、一月にシカゴに引っ越す予定、シカゴ出身なんだ、君はだれ?なにをしている?このページにあるものは何も発売したことがない、ロンドンのレーベルからメールを貰ったけど。リミテッドエディションのバイナルをプロデュースしたいっていう?ぼくはそれをするべき?ぼくはこわいのか?それからぼくは画像もあつめてるよ?そして画像を作ってる。インターネットでアートをやるのはすごく奇妙だ。


yoknapatofa (私のバカな返事。この時相手が年下だと思ったんだけど、実際は同い年だった。)
本当??! 私はてっきりあなたが一流のアーティストで、個人的に秘密でyoutubeでビデオを作ってるのかと思ったよ。本当のことをいうと、あなたに"君は天才だ"ってメールを送ろうかと思ってた。だけど、本当にそう思います。
私はあなたの日常にとても興味があります。だけど私は日本人です。あなたがアジアの人が嫌いじゃないことを祈ります。私も同じで、日本の大学生です。それから、映画やビデオを作り、VJをやっています。
レコードレーベルについてだけど、とてもいいことだと思うよ。あなたのヴィジョンと音はとても素晴しいから。だけど悪い大人たちが世の中にはいるかもしれないから、彼らをちゃんと見るべきだと思う..
怖がる必要ないと私は思います。あなたの世界はすごく美しい。

yokna



このやりとりの後facebookでも友達になり、私は彼が面白いと思って、いわばファンの一人として、動きをチェックしたりしてたりしてたんだけど、
ある時ふと気付くと自分が適当に作ったyokna patofaのページにさりげなくlikeしてくれてたりしてて、すごく好きになった。
だが2011年に自分の方は地震があって、自分はそれ以前に興味を持っていたことに価値を見出しづらくなった。
一方で、外国の友達が心配してくれたりしたのは、言葉だけなのに、これが、意外だったけれど、自分には励みになった。
そんな中、トニーは何も言ってくれなかったので、冷たいとも思ったし、
トニーは水瓶座だったので2月か1月だから地震の前だったんだろうか、
誕生日にハッピーバースデーと言ったけど何も返事くれなかったこともあり、
もういいやと思い、それ以降疎遠になった。
2012年の去年、ある時ふと思い立ち、彼のfacebookのページをのぞいてみたけど何も更新がなく、
彼のことだから、もうfacebookを捨てて、それ以外の場所で何か違う活動をしているのかなと思った。
そこで、彼の名前をグーグルで検索にかけてみた。
すると、tumblrに彼の写真と記事がいくつも出て来て、友達の追悼記事がいくつかヒットした。ripの文字と共に、彼が去年の夏にエイズで亡くなっていたことがわかった。
とりあえず、とりあえず、とりあえず、彼にはとても才能があった、人と違うことをする勇気・・何かへの溢れるような情熱?や仲間に対する愛情もあるように見えた。
とは言え、とは言え、とは言え、とは言え、自分が今見ると、彼の映像については、それほどは衝撃を受けなくなっている。だけどだけどだけどだけどだけど、当時は匿名で、何もかも投げ出すようにしてyoutubeにこういう才能が潜んでいるのに驚いたし、とても感動し、共感した。
stalemate、と彼はストレートの大切な友達について、メールで違う友達に話していた。
soulmateのような使い方で、チェスの手詰まりという意味のstalemateを使っていた。
自分もある意味ではそうだよと私は思った。

・・・位は、ウェットなことを書いてもいいだろうか。
時間をかけて友達になれそうな気がしていた。
アントニオ君に、近づけたらなぁと今でも思う。日々生きていて、とても頻繁に思う。

彼の音楽は、彼の死後友達がまとめて、bandcampにvol1,2とページがある。
http://wowbobwow.bandcamp.com/album/ij-i-v-c-i-the-antonio-urdiales-collection-volume-one
http://wowbobwow.bandcamp.com/album/ij-i-v-c-i-the-antonio-urdiales-collection-volume-two

3と、本とCDのリリースも予定されているという風に聞き、チェックしてるけど今の所はリリースはない。

アントニオ君はデニスがすごく好きだった。ネットを漁ると、トニーと親しい友達との文通が公開されていて、私はそれを全部読んだ。かなり疎外されたような気分になる行為ではあったが・・・。彼はその中でデニスについて何度も言及していた。

そしてそのデニス・クーパーは自身のブログに、トニーの追悼記事をのせた。
トニーの友達みんなが、その2日間、思い思いのメッセージを書いていた。

HTRKもBarry Doupeもデニスが好き。

実際、デニスはそういう人なんだと思う。一つのカルチャーの支えになってくれるというか。
Guideもそういう所がある。何かあった時にそこに書かれていた感情の論理とか、光景とか、人物を、生々しく身近に、思い出すような小説。 勿論PTA向け(陳腐な表現で申し訳ない)では全然ないのだけど・・・







2 最近、山形浩生さんと、一度だけアンナ・カヴァンのことをきっかけに言葉を交わさせて頂いた。
ちょうど山形さんのブログでアンナ・カヴァンのアサイラム・ピースについて知り、
この作家の人生と作品の様子について読んで、興味深く思った。

トムも図書館でイギリスの短編全集のような本を借りて来て、
「この人はすごいね、なんであんまり注目されてないんだろう?女の作家だったらデュラス並み(自分はこれについてはまだ保留にしたいが。私がデュラスが好きなのでということなのだろう)だと思うのに。あんまり翻訳もされていないよね。ヨクナ、何か広めるためにやったら?」
と言われたので、
「山形さんに怒られそうだからいやだ。」
と即答したけれど、
「怒られてみた方がいいんじゃない?」
という話になり、自分も、怒られてみるべきかもなと思った。
実際、今、アサイラム・ピースの英語と日本語を同時に読んでいるけど、(まず英語)、ハッキリしているから、デニスより訳すこと自体は簡単かもしれないとも思った。でもその分、一つ一つの単語で全体の印象が変わってきたりしてしまうのかもしれないし、まだわからないが。
山形さんも、他に翻訳された二冊の短編集以外に、宝石があるかもしれないと言っていた。映画とも関連している気がするし、デニスではなく、アンナ・カヴァンにまずトライしてみるかもしれない。
山形さんのことを知ったのは、中学生の時、CUTというカルチャー雑誌を買い始めた時からだ。文化に飢えていた田舎の子供だった私にとって(インターネットもない)、その頃CUTは最も楽しみなことの一つだった。山形さんはその中でコーナーを持っていて、難しいというか、恐そうな人だなと思っていたような気がする。同じ頃、ハーモニー・コリンのガンモを見て、私自身初めてビデオカメラを持った。ハーモニーと違い、私には撮る対象が何も見つけられなかった。ビデオに映すと何もかもが膨れて歪むような気がした。
山形さんのことが気になったのは、ハーモニーの『クラック・アップ』を買ってからだろうと思う。それまで見た事ない様な、ものすごく変な本だった。
考えてみると、全然違うけど、山形さんも文化面において、デニスのような存在でもあるのかもしれないなぁと少し思ったりもした。全然違うけれど。


3,写真が多くなって来て、これから映画の準備にも入ると思うので、一度今月中に、写真をまとめるつもり


それから、ごめんなさい、またtwitter始めていた。



何かあれば気がるに。
突っ込みでも・・・。




Tuesday, 2 October 2012

昇天川(アセンション・リバー)(加筆訂正)


拝啓 君へ 

鬱屈した 出口のない クリエイティビティで 体がはれつ しそうな君へ

どうしたんだい。この頃 ペースが落ちてるじゃないか
ストックがなくなったのかね

よければ、てつだいに行っても いいんだよ

今後の展開 期待してるよ とてもとてもとても

出来れば 最後には つかまってほしい
 けれどもね
君が どんな奴だったのか オチを
知りたいから。


私は歩く。 殺したいと思いながら。

限りない優しさ。の私の体を通過した表現としての、限りない殺意。
限りない優しさ。の私の時間を通過した表現としての、限りない殺意。

決定的な事、決定的な事、
センチメンタルとは思い出をキープする為の物だとアントニオ君は言っていた。

私も同じ。私も考えてみれば、自分の中に持て余しているこの嵐をどうにかして手のひらの中に持ち出して、眺めて・・・・・・、

考えてみれば、それは何だったか?
生まれてから18年間吸って来た空気だ。私の肺は酸素も二酸化炭素もいっしょくたに砕いた。勉強して、東京の大学へ行こうとした。あの廃墟の中で、土ぼこりを巻き上げて、片足を引きずりながらもう一方の足をコンパスの芯にして、円を描き続けるのは嫌だった。
 海があった 港があった 工場があった。
巨大な防塵ネットがあり、牛乳を流し込んだみたいに、まっすぐの新しい道があり、その両脇にはスクラップや砂の山があり、一階建ての集落や、ずっと閉められたままの倉庫がそれらを取り囲んでいた。
 私は自転車でよくこっちまで来て、左右へ曲がるのは親や祖母から禁止されていた。その牛乳の線みたいな道だけは唯一のセーフティゾーンみたいだった。
 そして一番西には川があった。川は無関心に流れ続けていた。どこか遠い所から続いている大きな川だった。

 私は東京へ到着する事が出来たが、勿論人生はまだ続いている。それで上がりでもなく、故郷が消えてなくなるわけでもない。もはや東京に住み始めてから10年近く経ってしまった。栄養の無い上に汚染された、角が全身を貫くように幾つも生えたカブトムシでも出て来そうな(私はそれを愛するんだろうが)荒廃した土で、口の中まで満たされて行くような夢を今朝方見、これは故郷からの発信であると軽く咳き込み目覚めながら思った。
 故郷からの嫌がらせ、もしくは注意勧告であると。さながらペトロの前に差し出された汚れた秩序の無い動物たちのように・・・・・
 煤まみれのブルーシートの四つ角を持って、、、どっさりと、あの土地の土やら化学物質やらを持って、天使が私のもとに降り立ったのであろう。


 葉子の肌に、モニターの光が霧のように入り込んでいる。画面にはこないだアップしたばかりのビデオ・・・。コアな部分は抜いてあるが。葉子はいくつものコメントを読む。
「君のビデオを見るとノンストップに達してしまう」

君と話したいのだが君は何も本当のことなんて言ってくれないんだろうな、心の底の声を聴くのは難しい---
というかそもそも、心には「底」なんかあるんだろうか
この世界みたいに、どこが本質かも中心かもわからないんじゃないだろうか 君の名前。君の顔。君を私の中に(人知れず、つねに)召喚するための、植え付けられた種。とても弱い種の 根だけ周りを全てパキパキに破壊するほどに強い、

やはりこの体がいけない、全ていけない。滅んで行くのも、閉じ込められるのも、泣きたくなるのも、この体ではないか。だけど否定ばかりしていても。この体をマッサージするのは楽しく・・・、この体を傷つけるのだって楽しいではないか?
私の小さな意識の話はどうでもいい。彼女を殴って言ってることを止めたくなった。時々そういう気持ちになる時がある。あの人は私を傷つける。意識なのか無意識なのか知らないが。そういう事態への、(これまで何度となく「怒って」きたが)一番無生産な、ゆえに差し引き的には一番生産的なリアクションは「驚く」ことだ。正直非常に驚かざるを得ない。

あいつが、どの程度現実界でやってくれるのか、見物だ。私が言っている現実界とはラカンの定義した奴ではない、自分の言葉での現実界だ。この現実界のある部分のコントラストを上げ、地獄に近い様な色彩に仕立てて欲しい。

ーーはラプンツェルであり、私を誘い(?)、私は助けた、と思うのだが(理想化し)結局私は幻滅し、何も現実では起こらないのだろうか>想像界では私は--する。この--部分はとても安易な欲望の現実化の表現であり、あえて言いたくもない。私は無くなり、とっても気持ちいい。私はHTRKのsweetheartを歩いている時にかける。カメラは私の一歩先を私を見つめながら進み・・・私は彼女の傷を砂漠で慰める。私は写真を撮ろうとする。内心を。
声を聴く。私は想像界では--の仕事なんかやっていない。そうとうキテるんだろう。これから生き続ける限り、どんどんキつづける。どっかで死ななければ。私はその年を設定してる。でもこれは実際、20の時の設定年数よりだいぶ延びた訳だが。どっちみち、最近毎日目が真っ赤だし、死ぬのが怖い、



音が遠のき、川で水浴びしてる男の子が見えた、太陽がそろそろ滅びかけながら沈み、







私が眼差した人物を私は滅ぼした 滅ぼしやすそうだったから
これまで滅ぼしやすそうに見せかけて滅びなかった全ての存在へのふくしゅうを込めて私はその子の体を丹念に何時間もかけて霊魂から離れさせた
霊魂から離れた後も、彼女の赤く腫れて時に様々なひもやタオルによって縛られた体はひくついて、高い声を出し、何かを求めていた。だけどこの時も、私を求めていたわけではなかった。
私の愛し方はエレガントではない。

ヨガの達人いわく、感情を排せば未来も見えるのだという、この不透明なごちゃごちゃしたものの中で目を細める。それから思う、それっていうのは多分未来が感情によって出来ているからだ。だから感情がない人間は見守ることしか出来なくなり、その代わりに何もかも出来る限り遠くまでがきっと見えて来る。でもやっぱり天使のように、「市長」のように、その物事自体には介入できないのだろう。

ある条件を満たした時に、これらのアクシデントは起こる。
私はこういったシステム的な考え方で何もかもを還元するのは好きでは無いが、一方で何も「テクノロジー」や「神の手」を挟み込まない限り、一定の条件を与えられた菌がその条件以上の増殖をしないことは良く知られている事実であり、それと同じ圧力が、実は自分のものに違いないと思っている「心理」を通して(欲望の大半は他者から感染したものであることは言うまでもなく)調整が行われている可能性もあるのである。
私は、私の街で誰かが刃物を持って街をウロウロする所までは想像できなかった。私が出来るのは警察を増やしたり公園や癒しの場を増やしたりといったことだけで、殺される者、打たれる者を直接助けるということは出来なかった。私はこの街に介入できなかった。私は環境を通して、この街に変化を与えていた。

私はハイヒールを深く突っ込みながら、少しずつ右手を上げて行く。やめて欲しいのか、続けて欲しいのかわからないような顔はスクリーンの全部を占めてもはや私の全てになる。私をいつも死にそうな気持ちにさせる薄く色の無い唇が開き、彼女の声が時々そこから聞こえる。私は動きを止め、彼女から言葉を引き出すのに成功する。それはとても陳腐なようだが重要な言葉達だ。私たちをくるむ泡は透明ではなく沸騰し始め、白濁している。私がいくら強く踏みしめても、彼女の体は尖った物質を飲み込んで行く、激しく
私は自分の足を切って解放される その足を見ているとそれは欲望そのものになり、もっと深く刺そうとしている。それから左手で彼女の足をつかみ、折り曲げて、二人の体は心とほとんど分離して、もはや痛みは感じない。私は彼女の体の上へ左膝と両手で這って行き、乗っかって、もう既に赤くなっている柔らかい部分を波立たせて行く 彼女は、終わることなく、その中にいる、体を持っているから。
私はいつものキスを受け入れ、それ以上に探り始めながら、彼女を殺したいと思う。

涙は?いつ流れるのだろうか?私はカインが好きだった、旧約聖書ではイブとカインが好きだ。カインは愛されたいのに愛されず、苦悩した。カインは俯き、顔を赤らめた。カインが捧げたものは見向きもされなかった。そしてカインが何をしたか?荒野で弟を殺した。私は何故こんなにクッキリその情景を思い浮かべられるのだろう?その血は大地にしみ込み、カインをうるさく責め立てた。


ぼくが猫を殺し続けたのは遊びのためではなく、楽しいためではなく、それがぼくが冷えて行かないために必要だったからだ ぼくの心理はぼくでさえわからず、ぼくが知っているのはぼくの体と顔でしかない。ぼくが何故、何かが好きか?どうして、それをやらずにはいられないのか?それは世界中の誰もわからない。それは闇のようなもので、意味からは一番離れた原則の中で、ただ現象しているものだ。
私の血管を力が打ち砕き、私は立ち上がり、私は純粋に楽しいと思う。私には下らない事しか思い浮かばなくなる。何かを殺していると。私の心は空っぽになり、その空隙の中に紫の煙が吹き込んで来るがそれは私をふくらませ、どんどん危険にさらしていくだけで、満たすという状況にはどこまで行ってもならない、私は奴らの体の単純さに真逆に撫でられ、恐怖し、苛つく。私は私のためにこれをやっているわけではない。私は猫と世界のためにこれをやっている。私はこれにその他の理由を与えたくはない。私はただやっている。魚を殺すなら、この殺し方は正しい。豚や牛を殺すなら、この殺し方は正しい。私は段々真理に近づいて来る様な気持ちになっていく、私は電話に自分の声を入れる。私は、こうやって神様と話す。私は、猫嫌いで衝動的にやっているようなものではなく猫が嫌いではなく、私は、もっと知りたいという私による要望のためにこの行動をとる。しかし、実際はわからない。それは闇の様なもので、世界中の誰にもわかるわけがないのだ。ぼくのむくな魂にすき間が出来て、そこにヒューヒュー空気が(あの肥料工場のイカれた空気が)吹き込んで来てイライラしてくるのでみっともない乞食の猫どもを一網打尽にする 本当ならば、もっと色々なことをして遊んでいるが差すがにそれはショッキング過ぎるかと思い、一般的な暴力性で満足している奴のフリをしていた ぼくは猫を、バイトしてた飲み屋で、あの肥料工場以上に
ヒドい匂いで生産性も無い口の中に食べられて行ったユッケのように切り刻み、そこには汚れた骨と、血だまりだけが残る
奴らは、目が欲しいから、猫を殺していたのだという。そんな幻影なんかはすぐ消え去るのに。ぼくは猫の目の上を滑り、猫はぼくを認識せず、領域侵犯を幾度となく行った。

ぼくのポイントと猫のポイントが重なり、猫はぼくに吸収された。ぼくは触った事もない程深く、肉の中に手を突っ込み、あらゆる匂いにまみれ、その粘り気の中に浸って生気を取り戻す植物だ。絶え間ないのだとすれば音で、ぼくは首を折り曲げ、ゼイゼイ普段の奴らからはきけないような変に人間的な音を立てるだけでもはや何も言えそうになく、目だけはこっちに必死に向けて来るその機械を、切り開き、つかの間まだ動いている心臓を見るのが好きなのだ、
それは、何でだろう?ぼくはこの冷えきった気持ちを、一生、死ぬまで解明することは出来ないだろう。ぼくはヤケになって殺しているわけではない。僕は常に余裕であり、準備万端で、ぼくはただ示しているだけで、残酷性を体現しているだけ。
物を見ない人間が生理的に無理な匂いでやっと気付くために、召喚されたのだ。


しゅんは道に寝転ぶと、その冷たさと固さ、引っ掛かって来る荒々しさを感じ、そこから乾いた真っ白な、100%の月を見た。月はしゅんとただ向き合っていた 街には誰もおらず、風の音だけが聞こえていた 呼吸をすることは、生きる事に近く、鼓動することも近く、反応し、吸収することも近い。
考えることは、それほど必要とせず、目覚める必要さえない。感じる・・・、それは極めて決まりきった反応の中で処理される 
ぼくが何をしても、この街では悪人には成らない。
悪人になる前にきっと、被害者になっている。
皆、ぼくの生きる意欲は、何処へ行ってしまったのかって顔をする だけど
神は小鳥を養っているではないかとイエスも言っていた。
その言葉を思い出すといつもホッとする。
しゅんはボロボロの顔で笑った。誰しも戦っている。誰しも誰かを求めている。心の中には、色んな物がすみついてあるものは笑い、あるものは呪ったってだけだ、そこにはそれ以上の真理はないだろう愛さざるを得ない人っているもんだ 差し込みプラグにはNO.6と書かれて薄汚れてる ぼくは殴り書きする 何度も手紙を書いた 相手がブラックホールみたいになった後は、その果てなさの中へと 手紙はくるくる回りながら落ちていった ゆっくりと








 私はホラー映画が好きではない。格闘ゲームが好きでは無い。私は戦争映画や映画の中で人が死んで行くシーンが大嫌いだ。私が好きなのはシムシティだ。街を作るシュミレーションゲーム。どこから手に入れたのか、多分親戚の家から借りたままだったんだろうけど、小学生の頃、ハマり出し、夏休みには、あのゲームを朝から親が帰って来るまで一日中ぶっつづけでやってた。
 シムシティは「シム」という存在たちの街だ。私は市長になり、街を何も無い土地からメトロポリスに発展させていくという使命を持っている。何種類かの地形の中から好きなものを選び、街の名前を決めるところから始まる。それから、火力発電所か、原子力発電所のどちらかをドカンと穿つ。その後、家を作り、商業地帯を作り、工場地帯を作る。そしてそれらを電線や、道路や線路でつなげて街が機能するようにして行く。警察署や消防署を設置し、税金を設定する。人口が多くなると、スタジアムを建てたりカジノを建てたり出来るようになる。
 基本的にこのような順序。だけど例えば、娯楽施設が増えると人口も増え税収は多くなるが、一方で治安が悪くなったりもする。工場が多くなると、公害が発生してしまうので、緑や公園を住宅地の周辺に作って問題を解決する。だからそもそも工場は住宅から離れた海側に作った方が良いこともその時覚えた。しばらくすると内陸では隣り合った家同士が発展し、高層マンションになったり、商業地が大企業になったりしていく。地価が上昇して、住民が不満の声を上げたりする。工場地帯はもくもくと煙を上げ、もっとへウ゛ィに、インダストリアルに、人畜有害になっていく。私は自分の街を個人的なテーマに沿い、丁寧に理路整然と作るのが好きだった。平和な街や、時には人のいない街を作った。大きなが海へ流れ、土地と土地の裂け目・・・、それはつまり川なんだろうが、そこに船がいつの間にか現れた。道路には車を表す点が増えて来て渋滞するようになったので、不条理な、つながっていない線路を点々と作った。シムたちはそれでも満足する。作っていて急に、ハリケーンが来る時もあるし、ゴジラが来る時もあるし、時にはメルトダウン(これが最低最悪のシナリオなのだが)が起こる時もある。だけど、シムシティの土地は、どこからも孤立していて、外側がどうなっているのか、わからない。

現在、こうやってこの距離から街の犯罪情報を見、グーグルマップで上空から様子をチェックするのは、きっとそのゲームの感覚を呼び覚ましている。
 あの辺は最初から私の興味を惹くものではなかった。魂にこんなに触れるものではなかった。色んな時代があり、色んな人たちが住んだ。何十年、何百年、かけて、多種多様な条件が重なって、段々と、時には急激に変化し、今のあの街になった。そして私はちょうどこの時代にこの年になりこの街とこうやって遭遇した。

 

1:
 晴れた日、7月、しゅんが、いつものように学校をサボって中心から外れた、No.67工場近くの空き地でしゃがんでくろを撫でていると、その上を、昇井川飛行場へ、ベトナムからの軍用飛行機が辺りを振るわせながら、ゆっくり移動して行った。そのずっと上から、宇宙の人工衛星も彼らを見ていた。そこには動物はしゅんとくろとしかいなかったから。白いシャツと黒いズボン=夏服姿のしゅんが両手でくろの頭をやさしく包むと、くろは気持ち良さそうに目をつぶった。
 空き地の土はほとんどカラカラに乾いていたけれど、空から線路を押し当てたみたいな痕が全身にあった。そこだけには水が溜まって光の穴が空き、不思議なほど雲を映していた。冷えた感触がし、土にハマっている薄緑の単純な形の生物が一斉に、さらさら動いた。それからしゅんの刈り上げた黒い髪も、いま、くろに彼がしているみたいに、誰かが撫でているような気が、くろにはした。
 遠くでは大勢の工場が煙を上げていた。
 しゅんはくろから手を放し、立ち上がった。くろが体を捻り、何処かに行きたそうにし始めたからだ。くろはしゅんと違い活発な性格なので、しゅんはそれを尊重している。くろはすぐ何処かに駆けて行き、しゅんはそのまま座り込むと、鞄を引き寄せ、国語のノートに鉛筆で、今いる空き地と、そのむこうにある、工場の絵を描き始めた。
 一時間ほど経っただろうか、雲が太陽を隠し、集中しているしゅんの顔に影が落ちた。何かの音が、街の方で聞こえた気がした。しゅんは街の方を振り返った。それと共にしゅんの心に、工場のけたたましい動作音と、たちこめる化学物質の臭気が蘇り・・・それは耐え難いほどのものになった。しゅんは立ち上がると荷物をまとめ、体の半分くらいはありそうな白い布製の学校指定鞄をゆらゆら肩にかけながら、空き地の前に首を傾げて止まっている、自転車の方へ向かった。
 
 自転車を走らせると、そこかしこに土の山が盛られている一帯が動いて行く、それから橋を通り、街へ出る。途中で右に曲がると倉庫街と小さな港だが、こっちの方ヘは滅多に行かない。
 ふと気配を感じ、しゅんは山が盛られている一帯のある場所で止まった。まだこの土の中から、何かをとろうとしている途中なのだろうか。その辺にはいつまで経っても同じ格好で、気絶したショベルカーや、地下から掘られたまま白い泥が固まりついている、巨大な骨みたいなパイプが転がっていた。もしもメカの犬がいたら、涎を垂らしそうだ。
 しゅんが止まったまま、カラカラと自転車を空転させて、右を向くと、そこには細い道があり、日射しの中、くろが、一匹で、こちらを見ているのだった。倉庫街が遠くに見えた。
 しゅんはしばらくそのまま止まってくろを見ていた。くろもこちらを見ていた。しゅんはくろに向かって手を上げると、再び自転車を漕ぎ、走り出した。
  
 
 

2
 この街は異常だった!そして何の変哲も無かった!私の愛する二人の少年少女は、この街で、純真さの欠片もない、卑劣な博士に作られた!1990年の11月と、1995年の8月のことだった。私は今、唐突に、フランケンシュタインを思い出す。どうして生まれたのか?そう、これは比喩ではなく最新のプロメテウスについての話だ。
 二人のいるこの街では、落ちている物を食べた犬や猫や鳩が道ばたに泡を吹いて転がっているのが、一年に何匹、何十匹も発見される。一年だけでは、一人の特別に残酷な人間の仕業かもしれないし、何人もの人間による偶然行われた同時の犯行かもしれない。ただ、ここ十年間でみるとそれは、ハッキリ結果に現れて来る。それはどの年にも常に存在する。それはもはや百件に近くなる。
 この街には、猫や鳥に餌をやる人間が沢山いる。公園で、家の前の狭い道で、空き地で、駐車場で・・・動物は餌を求めて集まる。集まり、増え、我が物顔で周辺を荒らす。糞をし、引っ掻き、別の人間達の迷惑になり、怒らせる。怒った人間の中の誰かは、ギザギザの罠をしかけ、食べ物に庭の害虫駆除にしか使わないような薬をを混ぜる。猫を仕留め、見せしめにその辺に置く。もしくはそれは、怒りでさえないのかもしれない。それは、無意味な、エラーとでも言えるほどの行動の結果なのかもしれない。それまで餌をやっていた者が、ふと心の闇に捉えられて、やるのかもしれない。


 街について二番目に言いたいことと言えば・・・街の左頬に切れないカミソリでギリギリ引きずった跡のように川が流れていて・・川の南には海があった。そして海岸やせり出した半島はコンピューターをぶっ壊した時に出て来るカチ割れて垣間見える、細かな精密回路のように工場で固められていて・・・、一体どんな巨人の侵入を警戒しているのだろう?・・・野球場の二倍くらいはある、馬鹿でかい柱と防塵網が、その一帯をまるで隠すように囲み、むしろ異様に目立たせていた。この広大な工場地帯全部さらってみても、住んでいる人間は0人。だからこの街の半分ほどは人口0人の土地になる。この辺を車で流すと、どの道を行っても人気はなく、その両側に、一メートルくらいの茶色の土の山が、点々と作られている。たった今、何かを埋葬したかのように、厳かだけど理解しがたく。夜は真っ黒になり空気が視界を覆うものに変化し、時間が無くなる。空を刺す沢山の煙突。迷路みたいな倉庫街。海浜公園が一つあり、そこに行ったことはない。
 一方、その川を上っていくと、人間が住む街があって、工場地帯から流れて来る匂いでなのか、どこへ行ってもいつもいつも何かが焼けこげたような変な匂いがした。この匂いは、他で嗅いだ事はない匂いだ。この匂いが、この街の呼吸する生物たちの思考と行動に、影響を与えていることはほぼ間違いなかった。いや・・・似てるものが、もう一つある。電波塔だ。この街の風景に時々紛れ込んで来る、あの。パチンコ屋とかトイザラスとかジャスコとかケンタッキーとか特性のないものに紛れて、紫と赤と白の奇怪で巨大な電波塔が、この街にはてんでバラバラに立っていた。うつぶせに埋まった古代生物の背骨のように、包帯を巻いたみたいにシマシマの、ぶっといプリプリした電線に貫かれ。一度この電波塔の意味を考察するため、地図を片手に、一つ一つ位置にマークを付けて歩いて行ったことがある。しかしそれぞれの配置を最後に結んでも、何ら効率的な形を成さないのだった。電線の行き場は地図では海になっていた。実際に行ってみると三角形が何重にもついたアンテナを生やした、四角い白い建物がその始点なのだった。その建物は、四隅フェンスで覆われて、明るい日射しの中、祠のようにただ、そこにいた。不思議にクッキリとした菱形の影が、トラクターやらシャベルカーやらが打ち捨てられた、何方向にも線が付き化膿した明るい地面に浮かんでいた。
 きっと、住んでいる誰も、この電波塔の法則性には気付けない。・・・それどころか、もしかしたらこの街の住人は、あれを、「見ること」さえ出来ないのかもしれないとも思う。だって、あんなものがあちこち野放しに建っているなんて、一般的に考えたら、明らかにおかしいもの。
 この電波塔は、しばらくは私の個人的問題であった。だからもう一つの問題である、あの家を知ってから私は、ふと、その位置を青のマークで、既にある電波塔の配置地図に加えたのだった。この街の中にあって、唯一、重要と思える感情を動かされる地点。家は、13番塔にとても近い場所にあった。相当拡大しなければ、ほとんど同一地点と言っていいほどの近さだ。あいつがいつ頃からあの辺に棲み着いたかは私は知らない。ただ、奴の体の一部によって二人が作られたことは本当だ。だから二人はずっと、自分達が奴の所有物だと疑わなかった。

 だけどある日、とうとうあいつが彼女を、処分すると知った私は、狂った実験室に忍び込んだのだった。台の上で目をつぶっている彼女の体を、ゴーグルとレインコート姿で火花を散らしながら切り開こうとしている。息をひそめ・・・、気付かれないように中に入ると、後ろから・・・、一突き。気絶させると、ぐたりと珍しいほど無害な様子で床に眠っているあいつの両脇に手を入れて、ガチャンガチャン散らばったものを倒しながらぐいぐい引きずって、実験室の真ん中の柱までなんとか移動させた。そして時間をかけてぐるぐる巻きとは行かなかったが、奴の片足だけ、手錠でしっかりそれに括りつけた。
 彼女だけではなく彼とも一緒に逃げなくてはと、すぐに、他の扉を全部開けて彼を探した。だけど、どこにも見当たらなかった。一体どこへ行ってしまったんだろう?どうしようもなかった。遠くの場所で彼女が起きてから、彼女に聞くのもありだと思った。何より今ここにこれ以上いたくなかった。だからとにかく彼女を盗み出した。
 彼女は生きてるかどうかわからなかった。目をつぶっていた。彼女の胸は開いていて、中から回路やコードが溢れていた。私は自分の上着を脱ぐと、彼女にかぶせてから、それでもはみ出た部分が心配で、袖を前で縛り付けた。そしてタクシーに乗ると、命からがら、飛び出した。
 タクシーの中は冷蔵庫のように肌寒く冷たかった。あいつが一体いつ目覚めるのかを考えると、すごく怖かった。それから残した彼のことも。彼は大丈夫だろうか?とても心配だった。雷が鳴り、突発的な嵐がこの街を覆った。雨が窓を打った、さまざまな色の光が硝子や、私達の皮膚を滑った。彼女は私に寄りかかって目を瞑っていた。薄い唇が少し開き、色が無くてとても可愛かった。遠くにいるように思える、ロボットみたいな運転手の前で、視界が鮮明になり、すぐに輝く雫で全てが覆われた。それは完全に遊園地であるように見えた。私には確かな重み、存在の感覚があった。目を瞑って、彼女をもっと徹底的に感じたかった。だけど目の前でカチカチと時計のようにずっと変化する暗闇の中の宝石のようなフロントガラスを見ていると、そう、まだ全ては始まったばかりなのだと思った。



Friday, 14 September 2012

scrap book:map:love

















sunny day,july,when shun was absent from school and went to the wilds which is out of central,next to the no.67 factory, and sitting for touching kuro(black cat) as usual,the army air plane to  noboriigawa airport  from vietnam moved slowly above them with shaking there all. more above,the artificial satellite looked at them too,because there were no animals except the two.shun,with white shirts and black pants,= summer school cloth,wrapped kuro's head gently and kuro closed eyes and seemed feeling good.


***

this city is abnormal. and normal too.my favorite girl and boy,the both of two had been made by really dirty guy who didn't have a bit of purity in this city.
now,i suddenly remember Frankenstein.
Yes part of this story is about the last prometheus. 

 何分走っただろうか、光が飛び散る後部座席で、彼女は目覚めた。彼について語る。彼は工場地帯に空いた湖で体を洗っている。)